三橋貴明 竹中平蔵のための経済財政政策

国民を犠牲する安倍政権

 安倍首相は自民党総裁選に向けて様々な工作を繰り広げていますが、この間、安倍政権は国民の生活を犠牲にし、一部の人々への利益誘導ばかり行ってきました。それは加計問題だけでなく、国家戦略特区諮問会議という仕組みにもあらわれています。安倍首相が3選すれば、日本国民の生活はさらに苦しいものになるでしょう。

 ここでは弊誌8月号に掲載した、経済評論家の三橋貴明氏のインタビューを紹介します。全文は8月号をご覧ください。

竹中平蔵氏のための規制改革

── 農業や労働分野の規制改革が諮問会議主導で進められています。

三橋 民主主義国家では、我々国民が選んだ国会議員が政策を提言し、国会で立法化するというのが本来のあり方です。

 ところが、国会議員でもない民間人が諮問会議に入り込み、自分たちに都合のいい政策を次々と提言しています。そして、その政策が閣議決定され、与党が多数を占める国会は実質的にそれを追認しているだけです。

 諮問会議が決めた政策によって日本国民が豊かになるのならばいいのですが、会議に入り込んだ連中の、自己利益最大化目的の政策ばかりが決められている点に問題があります。政策が変わることによって新たに生まれる利益(レント)に群がる典型的な「レント・シーカー」が竹中平蔵氏です。

 3月9日、竹中氏が民間人として参加している国家戦略特区諮問会議が、新潟市、京都府、愛知県で外国人の就農を解禁することを決めました。これまで、外国人の就農は、技能実習生に限定されていましたが、特区では自由に外国人が就農できるようになったのです。

 この議論を裏でリードしてきたのが竹中氏です。すでに2016年10月の特区会議で、竹中氏は、「海外からの農業人材の確保は、極めて重要であると思います」と発言していました。外国人の就農解禁で利益を得るのは、竹中氏が取締役会長を務めているパソナです。パソナは、外国人を登録させ、派遣という形態で就農させようとしているのです。まさに、自分で提案して自分の会社の利益につなげているのです。

 就農分野だけではありません。パソナグループの「クラシニティ」は、神奈川県での外国人家事支援人材の受け入れ事業を請け負いました。この新たな「レント」を作り出したのも、竹中氏でした。彼は2014年5月の特区会議で、「外国人の家事労働の活用とか……ワーキンググループですぐに始めていただきたい」と述べていたのです。

 さらに、農業分野で特区に指定された兵庫県養父市では、竹中氏が社外取締役を務めるオリックスの子会社「オリックス農業」が参入しています。労働移動支援助成金の急増など、竹中氏の主張によってパソナの利益につながった事例を挙げれば、切りがないほどです。

 こうした露骨な利益誘導が罷り通っているのです。諮問会議では、あらゆる分野で規制改革が叫ばれてきましたが、その狙いは民間ビジネスの拡大であり、新たに市場に参入して利益を得ることが目的なのです。

 アメリカではグローバル企業がロビイストを使い、自分たちに有利になる法律を国会議員に作らせています。しかし、曲がりなりにも民主主義のプロセスは踏んでいるのです。ところが、日本ではロビイストを使わなくても、諮問会議自身が自分たちに都合のいい政策を決めることができます。アメリカのウォール街は、ロビイストに金を払わなくてもいい日本の諮問会議システムを絶賛しています。

三橋貴明 種子法廃止は亡国への道
「アメリカ抜きのTPP」の狙い  森友学園問題や共謀罪に注目が集まる中、種子法の廃止法案が可決されました。種子法廃止は日本の農業に大きな影...