西田昌司 戦後政治そのものを見直せ

 野田総理の唐突な消費税増税が大きな政治問題となっている。

 将来的に国民負担率が上昇することについては、私は賛成の立場だ。国家の使命は国民の生命・財産・名誉を守ることだ。そのための国防、社会保障を維持する経常的支出を裏付ける恒常的財源が必要になるのは明らかだ。

 しかし民主党は「支出のムダを削減することで財源は確保できる」と言って政権を奪取したものの、結局財源を見つけることができず、今になって慌てて消費税増税を言い出した。
 
 だが、デフレ経済下で経済規模全体が収縮している中、増税を強行すれば一時的に税収は増えるだろうが、国民ひとりひとりの可処分所得は減ることになるのだから、結局、経済はますます収縮し、税収もやがては減少していかざるをえない。

 いま必要なのは増税ではなく、GDP、すなわち国民の所得全体を上昇させるための積極財政なのだ。増税はGDPが回復してからの問題だ。

 つまるところ、民主党には国家を経営する大局観もなければ、マクロ経済に対する理解もない。政策と呼べるものはなく、単に行き当たりばったり、右往左往しているだけであり、政権担当能力がないのは明らかだ。

 現下の政治混乱の原因を突き詰めると、戦後、日本が国家の原理原則を見失ったまま今日まで来てしまったことにある。占領統治、それに続く冷戦体制下でアメリカに依存する中で、日本政治は経済一辺倒で推移してきた。生命・財産・名誉のうち、生命と財産にのみ傾斜し、名誉という価値を見失ってきた。

 1989年に冷戦が終結すると、旧ソ連圏からは多くの国が次々に独立していった。それは、それらの諸国家が独立の意思を秘めており、その機会を待っていたことを意味する。ところが日本はアメリカから独立するどころか、ますます依存を高めていった。すなわち、独立の機会があっても日本には独立する意志がなかったのだ。

 その結果、日本社会はますます経済至上主義に陥り、それは政策的には「小さな政府」「官から民へ」「構造改革」という、経済のアメリカ化という形で表れた。この総決算として小泉政権の構造改革があったのだ。

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