日本会議は生前退位について立場を変えたのか

百地章氏の変節

 天皇陛下の生前退位(譲位)をめぐり、日本会議の主張に変化が見られるようになっています。日本会議はもともと生前退位に否定的な立場でした。例えば、日本会議と関係の深い百地章氏は、8月9日の沖縄タイムスで、「憲法が天皇の政治への関与を禁じている中で、陛下の言葉や考えそのままに政治が動いていいのかという疑問がある」と述べています。ところが、百地氏は政府の有識者会議ヒアリングでは、退位に賛成し、皇室典範の付則に根拠規定を置く特例法を提案しています(12月2日付朝日新聞)。

 百地氏が立場を180度転換した背景には、いくつかの可能性が考えられます。一つには、百地氏が天皇陛下のお気持ちを尊重するようになったという可能性です。つまり、当初は天皇陛下の生前退位に反対していたが、やはり天皇陛下のお気持ちを考え、生前退位に賛成するようになったということです。

 もし百地氏が自らの主義主張を捻じ曲げてでも天皇陛下の「おことば」を尊重しようとしているならば、それはあるべき尊皇精神ではないかと思います。もっとも、たとえそうだったとしても、一度はあれほど強い言葉で生前退位を批判したわけですから、納得のいく説明を行うべきです。しかし、そのことについて百地氏からしっかりとした説明はなされていません。これは公共圏で発言するものとして不誠実な対応だと言わざるを得ません。

百地氏は説明責任を果たせ

 もう一つの可能性は、日本会議が方針を転換したことです。つまり、百地氏は日本会議の方針のもと、天皇陛下の生前退位に賛成するようになったということです。

 もしそうだとすれば、日本会議を取り仕切っている日本青年協議会(日青協)が方針を転換したということになります。日青協は表向きは椛島有三氏が会長として君臨していますが、実質的なトップは安東巌氏という人物です。これについては菅野完氏が『日本会議の研究』(扶桑社)の中でスリリングに描き出しています。実は百地氏は安東氏のもとに月1回訪れ、指示を仰いでいるという証言もあります。安東氏と昔から付き合いのある元参議院自民党議員会長の村上正邦氏は、菅野氏のインタビューに対して次のように述べています(弊誌9月号より)。

菅野 僕は安東こそが日本会議や日青協を全て仕切っていると見ているんですが、そのように断言して間違いありませんか。

村上 間違いありません。日本会議事務総長を務めている椛島も、何かを決定しようとする際には、安東さんならどのように考えるだろうかと自問自答していると思いますよ。

菅野 僕に証言してくれた人たちも、椛島有三や百地章、高橋史朗、伊藤哲夫は、月に一回安東のもとに集まり、どうするべきかという指示を仰いでいると言っていました。村上先生はこういう証言を聞くと、さもありなんと思いますか。

村上 思います。

 いずれにせよ、百地氏が立場を変更した理由は、百地氏自身にしかわかりません。百地氏は学者として自らの言論に責任を持つべきであり、自らの立場変更について説明責任を果たすべきです。

 なお、菅野氏と村上氏の対談も収録した新著『日本会議をめぐる四つの対話』を、12月11日に弊社より出版予定です。ご一読いただければ幸いです。また、12月9日には本書出版を記念して渋谷のLOFT9でイベントを開催いたします。是非ともご参加ください。(YN)

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