原発より安価な自然エネルギー
大阪高裁の決定を受けて、福井県の高浜原発が再稼働に向けて動き始めています。しかし、東芝巨額損失事件を見れば明らかなように、原発には経済的合理性がありません。また、この間のエネルギー革命によって、いまや自然エネルギーの方が原発よりも安価になっています。
ここでは、弊誌4月号に掲載した、脱原発に取り組んできた弁護士で映画監督でもある河合弘之氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は4月号をご覧ください。
自然エネルギー批判を全て論破
── 河合さんは映画監督として『日本と原発 私たちは原発で幸せですか』や、その改訂版である『日本と原発 4年後』を制作し、原発の問題点を描いてきました。そしてこの度新たに、自然エネルギーをテーマとした『日本と再生 光と風のギガワット作戦』を制作されました。今回の映画を作ろうと思った理由を教えてください。
河合 前作の『日本と原発』はおかげさまで大ヒットし、約1800回自主上映され、10万人以上の方々に見てもらうことができました。ただ、その時に多くの人たちから、「脱原発しなければならないのはわかった。だけど、代わりのエネルギーはどうしたらいいんですか」と質問されました。これは決して逃げてはならない質問だと思ったので、その答えとして今回の映画を作りました。
── 日本では自然エネルギーに対して、「自然エネルギーは天気次第だから不安定だ」などといった批判がなされています。河合さんは今回の映画の中で、そうした批判に対して反論を加えています。
河合 例えば風力発電について言うと、確かに一つ一つの風力発電は風任せで不安定かもしれません。しかし、風力発電を何百本も設置すれば、大数の法則(*ある試行を多く重ねることで、ある事象が発生する確率が一定値に近づいていくという法則)が働き、高位安定することがわかっています。そこに太陽光発電やバイオマス発電なども加え、さらにコンピュータで発電量や時間などをコントロールすれば、安定的に電力供給を行うことができます。
そもそも自然エネルギーが不安定だと言うならば、ヨーロッパの現状をどう説明すればいいのか。ヨーロッパの中には、自然エネルギーが総発電量の30%、40%に達している国がたくさんあります。自然エネルギーが不安定ならば、こうした状況が生まれるはずがありません。
── 日本には「ドイツは脱原発に舵を切ったと言われているが、実際にはフランスの原発で作った電気を輸入している」という見方が根強くあります。
河合 それは自然エネルギー反対派の言いがかりにすぎません。そのような俗説については、映画の中でドイツの政府高官や財界関係者に取材し、徹底的に論破しました。
例えば、2013年のデータを見ると、フランスはドイツに向けて20・1TWh(テラワットアワー)の電力を送っています。しかし、そのうちドイツ国内で利用されているのは5・3TWhだけで、残りはドイツの送電網を経由して他のヨーロッパ諸国に輸出されています。他方、ドイツがフランスに輸出している電力は15・1TWhです。つまり、独仏間ではドイツが3倍も輸出超過になっているんですよ。また、ドイツの過去10年の電力輸出の推移を見ても、ドイツが周辺国に対して一貫して電力輸出国であることがわかります。
── 自然エネルギーを推進しているのはヨーロッパだけではありません。『日本と再生』では、中国が猛烈なスピードで自然エネルギーにシフトしている姿が描かれています。
河合 日本の多くの人たちは、中国が原発ばかり推進していると思い込んでいますが、実際には中国の原発は大幅にスローダウンしています。それは彼らが福島原発事故に学んでいるからです。その代わりに中国が力を入れているのが自然エネルギーです。
実際、中国は世界一の風力発電大国であり、原発の何倍もの電力を風力で生み出しています。その発電量は日本の風力の約30倍に達しています。しかも、中国は何十年もかけて自然エネルギーにシフトしたのではなく、ここ5年10年でこうした状況を作り上げたんですよ。まさに中国恐るべしというか、これこそ中国脅威論だと思います。経済界の人たちには「中国に負けたままでいいんですか」と言いたいですね。日本も今から必死になって取り組めば中国に追いつけると思いますが、これ以上差をつけられれば、もう追いつけなくなると思います。……