亀井静香 日本は韓国・北朝鮮とがっちり手を結べ

中国頼みの北朝鮮政策

 日本外務省はG7で行われた日米首脳会談について、日米両首脳は北朝鮮に対して「今は対話ではなく圧力をかけていくことが必要であること、中国の役割が重要であることを改めて確認した」と発表しています(外務省HPより)。確かにアメリカの軍事力をもってすれば、北朝鮮に圧力をかけ、金正恩体制を崩壊させることも容易でしょう。しかし、その過程で、北朝鮮が暴発して日本を攻撃したり、北朝鮮にいる拉致被害者たちが危険にさらされる可能性もあります。どれほどの圧力ならば金正恩は暴発せず、どれほどの圧力ならば暴発するのか、その基準は全くわかりません。

 また、金正恩は中国の言うことに従いませんし、中国も朝鮮半島情勢が混乱することを望んでいません。これでは拉致問題を解決することは困難でしょう。日本はもっと積極的に打って出るべきです。

 ここでは、弊誌6月号に掲載した、衆議院議員の亀井静香氏のインタビューを紹介したいと思います。全文は6月号をご覧ください。

文政権は「革命軍」の作った政権だ

―― 韓国の大統領選で文在寅氏が圧勝しました。亀井さんは選挙前に韓国を訪れ、文氏の側近と会談しています。

亀井 私が韓国に行ったのは、日本と韓国、そして北朝鮮ががっちり手を結び、周辺国に対抗していく関係を作りたいからです。いま日本と朝鮮半島は、トランプと習近平、プーチンという獰猛な奴らに狙われています。彼らに食い物にされるようなことは絶対に許してはならない。

 しかし、日・韓・北が協力するためには、日朝関係では拉致問題という棘を抜かねばならん。日韓関係では慰安婦問題とか日本が過去にやったことを清算する必要がある。そうしたことをきちんとやって、経済や文化、その他の面で協力していく。それが私の描いている夢なんです。これは大アジア主義ではなく、いわば「小アジア主義」ですよ。

 それで、私は文氏の側近たちと連絡をとり、大統領選後に文氏と会談することになりました。だけど、韓国では当選が決まると直ちに主要人事を発表しなきゃいけないんですよ。文氏は出口調査の段階で圧勝だったから、すぐに人事に入ってしまった。私はその事情を知っていたから、直接会うことはしなかった。

 ただ、彼の側近たちとは何度も会って、肝胆相照らす関係になりました。私が「日本と韓国、北朝鮮は協力すべきだ」と言うと、彼らは完全に同意していましたね。

―― 文政権には1980年代に学生運動に参加していた人たちが多く登用されていると言われています。

亀井 そういう意味では、今回の文氏の勝利は革命なんですよ。学生運動や反体制運動で逮捕されて刑務所に入ったような連中が「革命軍」を組織して、革命を起こしたんです。私が会った人たちも、何度も刑務所に入ったような連中ばかりだったよ。彼らに比べれば、日本の政治家たちは本当に柔いよ。日本にはああいう闘士は一人もいないね。

 ワシントン・ポストが韓国で起こった一連のデモと今回の選挙について、「世界中で民主主義が危機に直面する中、韓国は民衆の力がいまだに生きていることを示してくれた」といったように絶賛していたけど、実態が全くわかっていない。あのデモは自然発生的なものじゃないんですよ。あれは「革命軍」が主導したものなんだよ。「革命軍」は97万もの組織票を持っていると言われている。それで朴槿恵大統領を追い落とし、政権までとっちゃったんですよ。

 ただ、いくら「革命軍」とはいえ、政権は議会制民主主義のシステムに則って作らなければいかんわけだよ。文氏の所属する「共に民主党」は議会では三分の一しか議席を持っていないから、政権を維持するためには敵対勢力と協力する必要がある。だから、何とか敵側の連中に閣僚に入ってもらおうとしていたよ。だけど、韓国は来年地方選を控えているから、野党もそう簡単に与党に協力するわけにはいかないということで、なかなかうまくいっていないようだったけどね。

韓国の新政権は拉致問題解決に協力する

―― 注目すべき側近は誰ですか。

亀井 一番のポイントは国家情報院院長に指名された徐薫です。彼はもともと国家情報院の幹部を務めていて、金大中や盧武鉉政権時代に南北首脳会談を取り仕切っていた人物です。文政権では安全保障や治安、北朝鮮との交渉の全権を握ることになっています。

 私は徐薫に何度も会って、非常に仲良くなりました。彼は私に、「日本の拉致問題は自分がきちんと対応する。日朝平壌宣言が少しでも前に進むように全力を挙げる」と確約してくれた。それが今回の最大の収穫です。……