菅野完 安倍政権の無為無策が被害を拡大させた

西日本豪雨は人災

 西日本豪雨によって200名を越える方々が亡くなりました。これは安倍政権の責任でもあります。安倍政権の対応がしっかりしていれば、このような事態にはならなかったはずです。その意味で、前衆議院議員の亀井静香氏が指摘するように、これは人災と言えます。
 
 ここでは弊誌8月号に掲載した、著述家の菅野完氏の論考を紹介します。全文は8月号をご覧ください。

安倍政権が居座る限り、日本は危機に瀕し続ける

 繰り返すが、この「赤坂自民亭」が開催されたのは、5日夕刻だ。同日深夜に西村康稔官房副長官がSNSにアップロードした、安倍総理を囲んで撮影された記念写真の背景には、部屋の時計が写り込んでいる。その時計が指し示す時間は、20時半。つまり、先述の気象庁会見から5時間後に、自民党の議員たちは赤坂の議員宿舎に集まり、懇親のために酒盛りをしていたことになる。事前にチケットを売り急遽中止とすれば義理の悪くなる政治資金パーティーではないのだ。たかだか議員同士の懇親会を、つまりは中止しようと思えば誰気兼ねなく中止できるような飲み会を、自民党の議員たちは、気象庁が最大限の表現を用いて来るべき水害の大きさについての警鐘を鳴らした5時間後に開催していたということになる。

 さらに問題は、この会合に、上川法務大臣だけでなく、安倍総理、そして小野寺防衛大臣までもが出席していたことだろう。総務大臣の野田聖子氏の出席は確認できなかったが、閣内にあって防災の直接的な担当大臣である、首相、防衛相、総務相のうち2人までもが、この会合に出席し呑んだくれていたわけだ。気象庁の絶叫ともいうべき警鐘が鳴り響く中、「いろんな人が加わってワイワイ声もきこえないくらい」の会場で、首相も防衛相も「酒飲んでワー」となっていたのだから、この内閣に防災意識、いや、国家の安寧と国民の生命と財産を守る気概など微塵もないことは明らかだろう。

 当然のことながら、この政府与党による乱痴気騒ぎにはメディア各社から(不十分かつ不徹底な)批判が相次いだ。被災地で避難所生活を強いられる被災者たちの「どういうつもりなのだ!」という声も届き始めている。だが、こうした声に対応する安倍政権の姿勢は、森友問題や加計学園問題で見せたあの不誠実な対応と全く同じだ。

 「赤坂自民亭」の一件が露見するきっかけとなった「赤ら顔の安倍首相を囲んでの集合写真」をSNSにアップした西村副官房長官は、後日同じSNSで「7月5日(木)22:02にあげた私のツイートで、様々なご批判をいただいております。週末の大雨による災害発生時に会合を開いているかのような誤解を与え、不愉快な思いを抱かせたことをお詫び申し上げます」と述べた。なるほど確かに、文面は「謝罪文」の体裁をとってはいる。しかし、「週末の大雨による災害発生時に会合を開いているかのような誤解を与え」とは片腹痛い。誤解も何も、災害発生が予見され実際に災害が発生している時点で呑んだくれていたのは事実ではないか。

 また、安倍晋三の弁明も不埒極まる。7月11日にようやく被災地視察に出かけた安倍は、現場で記者に「初動が遅かったのではないですか? 酒盛りなんかしてる場合ではなかったのではないですか?」と聞かれ、「しっかり対応しています。ちゃんとやってますから、どうぞ御安心下さい」と開き直る始末だ。「ちゃんとやっています」とは聞いて呆れる。5日夜の飲み会以降、週明け9日まで、首相動静を見てみれば、わずか15分の会議出席を除き、週末は全て「来客なく私邸ですごす」で埋まっているではないか。

 何もしていないのである。気象庁が前代未聞ともいうべき異例の記者会見を開こうが、京阪神で土砂災害の危険性が逼迫していようが、北九州で、あるいは広島、岡山で、街が水没していようが、今の政権には関係ないのである。それよりもお仲間との飲み会、それよりも外遊、それよりも自分の通したい法律の国会可決が何より重要なのである。彼らの無為無策が、せっかく整備されたソフト面での防災対策の機能不全を生み、その帰結として、西日本水害の被害は拡大し、いまだにその全容がつかめない状態となったのである。

 今次の水害で明らかになったのは、安倍政権の「危機管理能力の無さ」ではない。そんなものは当初から露呈している。今次の水害で明らかになったのは、安倍晋三率いる現政権が居座る限り、この国に住む我々の生命と財産は、常に、「安倍晋三とその仲間の都合」次第によって、危機に瀕し続けるという極めて残念な事実だ。