岸井降ろしは計画されていた
―― 岸井成格キャスターに対する批判についてどう思いますか。
佐高 岸井とは大学のゼミが同期で、50年来の付き合いになりますが、彼は毎日新聞の政治部長、主筆を歴任しただけあって、考え方は保守的な男ですよ。だから革新と呼ばれる私とは何度もぶつかってきた。その保守的な岸井が、全国紙の一面広告で個人攻撃を受けている。攻撃の相手もやり口も異常ですよ。安倍政権がいよいよ狂気を帯びる段階に入ったということでしょう。
私は『週刊金曜日』に「岸井成格一人がそんなに怖いのか」と書きましたが、岸井降ろしは前々から計画されていたものではないか。今年の春先に官房長官のスゲ、じゃなくてスガか、菅は「国会の見通しがついてから」と、多忙を理由に沖縄の翁長知事に中々会おうとしなかった。それなのに、わざわざ岸井が私的に開いている勉強会に来て、1時間だか2時間だか知らないが最初から最後までいて、岸井に「良いお話を聞かせて頂きました」と言って帰っていったそうです。翁長知事に会う時間はないのに、岸井の話を聞く時間はあるというわけだ。安倍政権の体質がいかに陰湿かということです。
岸井降ろしが本格化したのは、政権批判をした9月以降です。これははっきりしている。いまTBSの内部情報で、岸井を降板させて朝日新聞の星浩を後釜に据えるという話が流れているけど、9月の時点でTBSは岸井の頭越しに後任の話を星に持って行っていたんです。星は来年3月で朝日新聞を退社する予定だから、ある先輩の紹介でさる大学に再就職が決まっていた。ところが、9月になってから大学の口を断った。その理由が岸井の後釜に座るからというものだったわけです。火事場泥棒もいいところだ。
安倍政権の狂気はどこから来るのか
―― なぜ岸井成格一人がそんなに怖いのでしょうか。
佐高 岸井が攻撃された理由は二つあると思う。一つは、9月16日に「NEWS23」で「メディアとして(安保法案の)廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と政権を批判したことです。これは国民の声を代弁した当然の主張ですよ。しかし、他のマスコミはそれすら出来ないほど腰が砕けている。時事通信の田崎史郎とか日経の田勢康弘とか星浩とか、骨なしクラゲみたいな連中ばかりです。だから一本筋を通している岸井一人だけが屹立する形になって標的にされてしまった。
もう一つは、岸井と安倍の個人的な関係です。安倍はコンプレックスが強い男だから、自分の知られたくない姿を知っている人間をもの凄く煙たがる。現に安倍は自分の家庭教師だった平沢勝栄を遠ざけています。「安倍政権が続く間は、平沢は大臣になれない」というのは公然の事実です。
岸井も安倍が煙たい人間の一人です。安倍の親父の晋太郎は毎日新聞の記者だったから、岸井とは先輩後輩の関係でした。岸井は晋太郎が外相の時に晋太郎番をやっていて、晋太郎が書いた原稿をリライトするほどの仲だった。ちょうどその頃、晋太郎が頭を悩ませていた全く使えない秘書が安倍晋三です。晋太郎は周囲に「困ったものだ」とよく漏らしていたらしいが、岸井はその姿を誰よりもと言って良いくらい知っている。……
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