電通家宅捜索は安倍政権の意向か

安倍政権と電通の蜜月関係は終わったのか

 電通の社員が過労自殺したことを受けて、電通本社と複数の支社に対して家宅捜索が行われました(11月7日付時事通信)。これまで安倍政権と電通が近い関係にあったことを考えれば、安倍政権の意向なくして家宅捜索が行われたとは考えにくいと思います。おそらく安倍政権の何らかの意向が働いているのでしょう。

 弊誌は以前より電通のあり方を問題視し、多くの識者にインタビューを行ってまいりました。ここでは、弊誌7月号に掲載した作家の本間龍氏のインタビュー記事「公取は電通にメスを入れよ」を紹介したいと思います。今回家宅捜索を行ったのは東京労働局であり、公正取引委員会ではありませんが、これが電通のあり方を考えるきっかけになることを願っています。(YN)

公取は電通にメスを入れよ

海外の記者が注目する電通の支配力

── 欧米のメディアは、五輪招致の裏金疑惑で、電通も関与しているのではないかと報じました。ところが、日本のメディアは電通の名前を出すことに及び腰です。

本間 実は、6月7日に外国特派員協会に呼ばれて、電通に関して話をしました。そのきっかけは、裏金問題を受けて、海外の記者たちから「なぜ電通が強大な力を持っているのか」を知りたいという要請があったからです。

 5月13日にフランスのジャーナリストが「電通は日本のメディアを支配しているのか?」と題する長文の記事を発表し、内田樹氏がいち早くその一部を翻訳して発表しています。そこには、電通と博報堂が「広告、PR、メディアの監視を集中的に行い、国内外の大企業・自治体、政党あるいは政府のための危機管理を担当し、マーケットの70%を占有している。この広告帝国が日本のメディアの論調を決定していると批判する人々がいる」と書かれています。

 ところが、外国人記者たちは、なぜ電通がそれほど力を持っているのかを理解できないのです。それは、欧米には電通のような広告代理店は存在しないからです。欧米では通常、広告会社は制作を行う会社と、メディアを購入するメディアレップとに分かれています。それは、特定の広告会社に力が集中しないようにするという考えがあるからです。欧米には、電通や博報堂のように一社で何でもできる広告会社は存在しないのです。

 さらに、欧米の広告会社は「スポンサーのためにメディアの枠を買う」ことを基本スタンスとしています。これに対して、日本では、「メディアのためにメディアの枠をスポンサーに売る」という体質を持っています。そもそも日本のメディアは、広告代理店に広告を売ってもらうという弱い立場にあるということです。

 しかも、海外では広告会社の寡占化を防ぐために、一業種一社制をとっています。一つの広告会社が、同時に二つ以上の同業他社の広告を扱えないようにしているということです。例えば、自動車業界でトヨタの広告を扱ったら、日産やホンダの広告の仕事はできないということです。

 広告代理業はもともとアメリカで発達したわけですが、アメリカでは約半世紀前から一業種一社制は確立しています。彼らは、寡占化の弊害をわかっているのです。

 ところが電通は、日本オリンピック委員会(JOC)のスポンサー企業となる「ゴールドパートナー」の一業種一社というルールを撤廃し、同業種のスポンサーまで集めています。すでに、みずほと三井住友銀行、東京海上と日本生命といった同業かそれに近い業種の企業が「ゴールドパートナー」に決まっています。

裏金問題に対する国際社会の目は厳しい

── 当初、裏金問題でほとんどのメディアが電通の名前を伏せて報道していました。

本間 いまも、ほとんどのメディアが沈黙したままです。5月19日に『東京新聞』が電通に焦点を当てた記事を掲載し、その2日後には『中日新聞』にも同じ記事が載りました。同紙の発行部数は約200万部で、中部地方の有力紙です。よく載せたと思います。また、雑誌では『週刊ポスト』が電通の特集を組みました。

 ただ、これらは数少ない例外で、主要メディアは電通の名前を出したとしても、批判的なことは一切書きません。『毎日新聞』の「風知草」(5月23日付)で山田孝男さんが「『電通』に聞きたいこと」という記事を書いていますが、電通に直接取材して、もっと踏み込んで書いてほしいと思いました。

 JOC会長の竹田恒和氏は国会答弁で、「電通に相談し、実績がある会社だと確認したので、カネを払った」と述べました。ここで、電通の名前が上がったのですから、次は電通の社長が国民の前で説明すべきです。ところが、大手のメディアは電通に対して記者会見の要求さえしない。実は、読売、朝日、毎日、日経は東京五輪のスポンサーになっているのです。五輪関係で不祥事があっても、これらの新聞は報道できないのです。……

本間氏のインタビュー記事の全文は本誌7月号をご覧ください。

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